| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-080 (Poster presentation)
樹木群集の共存を説明する要因として植物土壌フィードバックが注目を集めている。実験研究ではアーバスキュラー菌根樹種は外生菌根樹種よりも負のフィードバックを示す傾向が強く共存を促進すると考えられてきたが、野外観測データは必ずしもその傾向を支持しないことがあり、土壌微生物が実際にどのように多種系の樹木群集の共存に寄与するのかは十分に検証されていない。京都府芦生研究林において19樹種(スギ・サワグルミ・ブナ・ミズナラ・トチノキ等)を対象とし、植物土壌フィードバックが実生の生存率や成長率に与える影響を解明する野外実験を実施した。ポット実生は滅菌赤玉土を基本土壌基質とし、そこにスギ・サワグルミ・カエデ類・外生菌根樹種の4種類の土壌、あるいは育成する実生と同種の土壌を接種して育成した。土壌接種処理ではγ線滅菌後に接種する処理区とそのまま接種する処理区を設け、実生の生存・成長の違いが土壌真菌類の違いによるものなのか、あるいは接種土壌の物理化学的性質が関与しているのかを統計的に分離できる設計とした。5年間のあいだに合計870個体のポット実生を栽培し、収穫した実生は葉・茎・根にわけてスキャンし乾燥重量を測定した。同時に根圏DNAのサンプルも採集し、真菌類群集を同定するためMiSeqによるアンプリコンシーケンスを行った。樹種の系統関係を考慮した一般化線形混合モデルで解析したところ、スギ・サワグルミ・カエデの土壌は外生菌根樹種の土壌よりも実生の成長率に負の効果を与えるが、とくにスギではγ線処理によりその負の効果は大きく緩和されることがわかった。フィードバックの強さを調べると、土壌真菌はアーバスキュラー樹種間のフィードバックを正の方向へ変化させ共存を不安定化する傾向がある一方、外生菌根樹種はフィードバックを負の方向へ変化させ共存を安定化する傾向があることがわかった。