| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-081 (Poster presentation)
ササ類は種ごとに異なる数十年から120年の周期をもって有性繁殖 (開花・結実) した後に枯死し、大量に生産された種子が発芽して実生更新が始まる。演者らは愛知県で2017年に有性繁殖したスズタケ (Sasa borealis) を対象として、発芽時から実生の運命を追跡しており、1) 結実から2年後 (2019年) に実生は大発生し、その前年と後年も僅かながら発生したこと、2) 時期的には、7月下旬ごろから実生の発生が確認され、8月下旬から9月にかけてピークを迎えたこと、3) 実生の死亡要因は、病気や水分欠乏など何らかの生理的異常による黄変が最多であったのに加え、当年もしくは発生翌年の冬から早春にかけては哺乳類による食害が顕著になったことを報告してきた。しかしながら、大発生の当年およびその前後年という3年間の発生年次の違い、あるいは同一年内の発生時期の違いが、その後の実生成長に差を生じさせる、また死亡リスクに影響をもたらす可能性が残っている。
そこで本研究では、個体追跡によって1カ月に一度の頻度で収集した実生の発生消長に関する野外データを解析し、この可能性を検証した。その結果、大発生年の実生はその前後年に発生した実生に比べて成長が早い(地上高が高い、個体あたりの稈数が多い)ことが明らかになった。加えて、発生時期を説明変数、地上高を目的変数とする一般化線形混合モデル (GLMM) による解析によって、同年の早い時期に発生した実生は遅い時期の実生に比べて当年および翌年以降も有意に地上高は高いが、発生から4年経過するとその有意性はなくなることが判明した。これに対して、発生してから食害による死亡、および食害以外による死亡が確認されるまでの日数を目的変数にとったGLMM解析からは、それぞれの日数が発生時期と無関係であることが見出された。この理由としては、特定の季節における食害の集中や、死亡要因の空間的なばらつきが、それぞれ挙げられる。