| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-084 (Poster presentation)
九州北部、くじゅう地区では草原景観が卓越しており、貴重な草原性植物の生育地となってきたが、その中でも生物多様性の保全上重要な立地環境の一つは湿性草原である。本地区では大規模な中間湿原が分布するが、小規模な湿地環境も残存しており、予備調査において希少植物が集中する湿生群落が湧水法面で確認された。そこで本研究では本群落の組成と構造および立地条件を明らかにし、周辺の中間湿原の群落との違いを考察することを目的とした。
調査プロットは予備調査において特に希少な湿性植物種や草原性植物種の分布が確認された法面に9プロットが設置された。法面の土壌は過湿で、湧水の浸み出しによるものと考えられた。各プロットの調査面積は4㎡で、植物社会学的植生調査の他、出現種の自然高、フェノロジーを測定記録した。また同地域の半自然草原および湿生草原で既に得られたデータ(計126プロット)も用いて解析した。
湧水法面における湿生群落の出現種数の平均値は29.3種だった。植被率と群落高の平均値は各々33.3%、70.4㎝で、特に前者は低かった。湧水法面の湿生群落は3つの群落型が認められた。優占種はトダシバやススキだった。最も過湿な立地のモウセンゴケ群落型にはモウセンゴケやシライトソウやツクシゼリ、ウメバチソウ、ヤマイ等の湿性草本やナンバンギセルが出現した。その他、ツクシコゴメグサ型等が認識された。本調査地の法面では夏季に年1回の刈取りが実施されていた。
湧水法面の湿生群落は種多様性が高く、国や地方版のレッドリスト種が多数出現し、希少種の生育地として重要であることが確認された。群落の保全には湧水環境の維持が必須と考えられた。発表では中間湿原等の群落との比較考察を行う予定である。本研究はJSPS科研費 JP19K06107およびJP22K05706、JP25K09175の助成を受けたものである。