| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-086 (Poster presentation)
過去に起きた植生変化と気候変動の関係の解明は、現在から将来にわたる気候変動に対する植生の応答を予測する上で重要な示唆を与える。植物分類群の気候変動に対する応答はニッチによって異なると考えられるが、長期的な植生変化をとらえたデータの不足から定量的な理解は十分に進んでいない。福井県に位置する水月湖の年縞堆積物からは、過去約7万年という超長期の花粉組成の変化を十数年という高解像の時間間隔で評価することができる。本研究では約17,000〜11,000年前の年縞中の花粉組成の変化から、植物分類群の長期的な変動パターンとニッチの関係を明らかにすることを目的とした。ニッチの種類として、気温、降水量、日射量、積雪深、高木・亜高木層の被度(光環境の指標)を採用した。全国の自然植生および気候データから、36の植物分類群ごとにアバンダンスと各気候値の確率密度の逆数で重み付けした加重平均気候値を算出し、これを各ニッチの値とした。次に、植物分類群間の長期的な変動パターンの類似性とニッチの類似性との関係を解析した。その結果、時系列クラスタリングによって分かれた4つの植物分類群グループ間でニッチに違いが認められた。対象期間の後半にかけて増加傾向を示すグループや山型の変化パターンを示すグループは比較的温暖で降水量が多く、積雪深が浅く、高木・亜高木層の被度の高い環境にニッチをもっていた。一方、後半にかけて減少傾向を示すグループは比較的冷涼で、降水量が少なく、高木・亜高木層の被度の低い環境にニッチをもっていた。植物分類群のペア間での時系列変化の相関係数と各ニッチ値の差分との関係は、ばらつきが大きいものの、気温ニッチにおいて最も相関が高かった。以上のことから、植物分類群間の長期的な変動パターンに影響する要因にはニッチ以外の要因も想定されるものの、気温ニッチが最も重要な影響をもつと考えられた。