| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-095  (Poster presentation)

ダケカンバの高山・北方への進出は倍数化が鍵を握る
Polyploidization drives the history of adaptation of Betula ermanii to high altitudes and high latitudes

*相原隆貴(筑波大学), 白谷紗英(筑波大学), 清野達之(筑波大学), 内山憲太郎(森林総合研究所), James R.P. WORTH(FFPRI), Nian WANG(Shandong Agricultural Univ.), 津村義彦(筑波大学)
*Takaki AIHARA(Univ. Tsukuba), Sae SHIRATANI(Univ. Tsukuba), Tstsuyuki SEINO(Univ. Tsukuba), Kentaro UCHIYAMA(FFPRI), James R.P. WORTH(FFPRI), Nian WANG(Shandong Agricultural Univ.), Yoshihiko TSUMURA(Univ. Tsukuba)

 日本列島の高山の植物相は、北米・周北極域の分類群およびその姉妹種であるため、第四紀の氷期に南下してきた種群の生き残りで構成されていると理解されている。一方で、ダケカンバ Betula ermaniiは、日本の高山に広く生育する代表的な広葉樹であるが、南方由来である可能性を筆者らは掴みつつある。ダケカンバは通常二セットのゲノムを倍保持する四倍体であることが知られるが、その南限地(紀伊半島・四国)には二倍体が存在し、祖先的な系統であることが示唆された(Aihara et al. 2024)。この二倍体ダケカンバは、カバノキ属のうち東アジア東部の種群Costatae節に属し、チョウセンミネバリBetula costataの隣の系統と推定された(Aihara et al. unpublished)。これらのことから、ダケカンバは東アジア東部由来であり、何らかの要因で日本列島以北の寒冷・多雪環境に適応した種となったと考えられる。
 本研究では、ダケカンバの倍数化と環境適応のプロセスを探るべくRAD-seqを用いた近縁種間や日本列島・サハリン・朝鮮半島の倍数性を考慮した集団遺伝学的解析を行った。主座標分析およびSTRUCTURE解析いずれにおいても、ダケカンバは、二倍体ダケカンバおよびチョウセンミネバリと区別され、かつ中間には位置しなかったため、明確な親種は判断できなかった。一方で、ダケカンバと二倍体ダケカンバ間およびチョウセンミネバリ間に三倍体と見られるF1雑種の存在が判明し、種間の遺伝子交流が頻繁であることが推定された。ダケカンバのうち四国の集団はこれら二種に最も近縁で、ヘテロ接合度も高いことから、ダケカンバの最も古い集団であると考えられた。集団遺伝構造は、四国・本州中部・北海道・サハリン・朝鮮半島の方向に距離による隔離が見られ、ダケカンバは日本列島から北方・大陸へと進出したことが示唆された。発表時にはこれらに加え、圃場試験における成長形質や気孔サイズ・密度の比較等から、倍数化による形質変化と高山・北方への進出の関連を議論したい。


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