| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-096 (Poster presentation)
本研究は、都市近郊の造成地において草原生植物の成立条件を明らかにすることを目的とし、客土および耕起といった土壌の処理が播種後の発芽・生存に与える影響を5年間にわたり評価した。試験は東京都清瀬市の大林組研究所敷地内に設置した1m×1mのコドラート15箇所で実施し、客土区・耕起区・対照区を5反復でランダムに配置した。対象種はアキカラマツ、オカトラノオ、ノハラアザミ、シラヤマギク、ツリガネニンジンを2020年度の冬に播種し、2022年度の冬にはワレモコウ、ホタルブクロを追加で播種した。各種は発芽と生存を春・秋の年2回調査し、コドラート内のxy座標を記録して個体識別を行った。解析には、条件付き発芽確率および生存確率を応答変数とした一般化線形混合モデル(glmmTMB、二項分布・cloglogリンク)を用いた。発芽については、多くの種で客土区の発芽確率が最も高く、対照区ではアキカラマツ、オカトラノオ、ノハラアザミ、シラヤマギクの発芽がほとんどみられなかった。一方、ツリガネニンジンとワレモコウは対照区でも一定の発芽が継続し、処理を施さずとも成立する可能性が示された。生存確率も多くの種で概ね客土区で高く、次いで耕起区、対照区の順であった。ただしアキカラマツは2年目以降、対照区で生存確率が最も高くなるなど、処理効果が種により異なることが明らかとなった。また、生存確率には大きな差がみられない種でも、開花個体数や個体サイズでは客土区が優れる傾向が観察された。これらの結果から、造成地における草原生植物の初期定着には客土が有効である一方、生育に適した環境が揃った場所であれば、処理を施さなくてもライフサイクルを回せる種も存在することが明らかとなった。今後は開花・結実など後期ステージの解析に加え、被陰条件や既存植生との競合が定着に与える影響も評価し、造成地での草原再生手法の最適化を図りたい。