| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-103  (Poster presentation)

山陰地域における絶滅危惧種オキナグサ(Pulsatilla cernua)自生地の植生と個体群構造
Vegetation and Population Structure of the Endangered Pulsatilla cernua in the San'in Region, Japan.

*針本翔太(鳥取大学, 株式会社ウエスコ), 久保満佐子(島根大学)
*Shota HARIMOTO(Tottori Univ., WESCO Inc.), Masako KUBO(Shimane Univ.)

 オキナグサ(Pulsatilla cernua)は、かつて里山の草原を象徴する植物であったが、近年は草原面積の減少や管理放棄等により絶滅の危機に瀕している。鳥取県および島根県においては、本種の多様な生育環境が残存しており、個体群の維持に資する管理形態を解明する上で、極めて重要な地域である。本研究では、山陰地域における本種の保全対策の立案を目的として、各自生地において植生および個体群構造の調査を行った。
 調査地は、鳥取県6箇所、島根県4箇所の自生地を対象とした。各地点で個体サイズ(地際直径)、開花数、結実数を記録した。植生は、1×1mの調査枠を設置し、植物社会学的調査を実施した。植生データは、Bray-Curtis距離を用いた階層的クラスター解析および指標種分析を行い、生育環境を類型化した。さらに、管理形態が個体サイズに与える影響を明らかにするため、一般化線形混合モデル(GLMM)による解析を行った。
 クラスター解析の結果、自生地は6グループに分類された。指標種分析により、Group1(オキナグサ)、Group2(チャボウシノシッペイ等)、Group3(メリケンカルカヤ等)、Group4(ススキ等)、Group5(クズ・トダシバ等)、Group6(チガヤ)など、管理手法や頻度の差を反映した植生の違いが認められた。また、GLMMの結果、標準的な「草地+地際からの草刈り」と比較し、「草地+本種を回避した草刈り」および「人工構造物際」においては、個体サイズが有意に大きくなる傾向が示された。これは種間競争の緩和に加え、草刈りによる直接的な影響の回避が繁殖個体の維持に寄与すると考えられる。一方、「火入れ」や「裸地」では個体サイズが小さくなる傾向にあり、前者は生長制限、後者はセーフサイトの創出により実生更新が促進されたためと考えられる。以上より、繁殖個体と実生の生育環境を考慮した複合的な管理は、持続的な個体群の保全に有効的であると考えられる。


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