| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-104  (Poster presentation)

長期コホート追跡によるブナ実生集団の成立過程における遺伝構造の変化
Changes in genetic structure during the establishment process of beech seedling populations based on long-term cohort tracking

*宮崎祐子(岡山大学), 多々納琴音(岡山大学), 赤路康朗(国立環境研究所), 山田和弘(岡山大学), 松本哲也(茨城大学), 廣部宗(岡山大学), 坂本圭児(岡山大学)
*Yuko MIYAZAKI(Okayama Univ.), Kotone TATANO(Okayama Univ.), Yasuaki AKAJI(NIES), Kazuhiro YAMADA(Okayama Univ.), Tetsuya K MATSUMOTO(Ibaraki Univ.), Muneto HIROBE(Okayama Univ.), Keiji SAKAMOTO(Okayama Univ.)

森林生態系において、次世代を担う実生の定着プロセスは集団の多様性維持に決定的な役割を果たす。特に、親木周辺での高い死亡率や近交弱勢による影響は知られているが、これらが10年以上の長期にわたり、特定のゲノム領域や血縁関係とどのように連動して進行するかは十分に解明されていない。本研究では、発芽直後の実生コホート482個体を10年間にわたり追跡調査し、発芽から10年までの生育段階および成木世代との比較による遺伝構造の変化を解析した。
遺伝的に推定された親木からの距離を解析した結果、生存10年目の個体は死亡個体に比べ、親木から平均3.16m遠方に位置していた。初期段階では見られなかったこの距離の差が生存年数とともに拡大したことは、親木近傍での生存リスクが長期の定着において累積的に作用することを示唆した。発芽直後に認められたホモ接合を有する個体は10年間で段階的に減少し、集団全体の近交係数は低下した。個体全体の近交度と主軸長成長との間には生存1年目および3年目ともに相関が認められなかった。一方、各アレルを説明変数とした線形回帰分析を用いて関連解析を実施した結果、発芽初期から3年目にかけて主軸長成長量を正あるいは負に規定する少数の特定の対立遺伝子が同定された。以上の結果から、ブナ実生の定着過程は遺伝的にランダムなプロセスではなく、空間配置および遺伝的な制御が複合的に作用することで、集団全体の多様性が維持・修復される動的な過程であることが示唆された。


日本生態学会