| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-105 (Poster presentation)
シコクシラベ(Abies veitchii var. shikokiana)は四国の石鎚山、笹ヶ峰および剣山のわずか3山の頂上周辺にのみ遺存的に生育するシラビソの固有変種であるが、地球温暖化等による集団サイズの縮小が危惧されており、生息域内外での保存が重要視されている。これまで当該樹種3集団の遺伝的変異を明らかにし(岩泉ら 2016;森林遺伝育種 5: 172-179)、結実個体(母樹)を対象とした次世代(種子プール)の遺伝的多様性の解析や採種戦略の検討を行ってきたが(岩泉ら 2021;日林誌 103: 78-85)、現地内での天然更新や種子の収集に重要な、結実量の年次変動やその個体間での違いについては知見が十分でない。あわせて、繁殖量と関わりうる個体サイズ・成長率との関係性や、生育環境等に起因する個体の空間的な要因についても評価することが重要である。
本研究では、石鎚山のシコクシラベ集団を対象に、主要な生育分布を網羅する形で様々なサイズ級から108個体を選定し、2011年~2025年の15年間にわたり、結実期である8~9月に球果着生量(個数)を目視で連年調査した。同時に、結実量の年次変動や個体間での変動パターンの違い、個体サイズ・成長率や個体位置との関連性について解析した。
その結果、個体あたりの平均球果着生数は2011年、2014年、2023年で50個以上と多く、結実の豊作年と考えられた。2017年、2018年、2021年でも個体あたり平均10個以上の着果が見られたが、それ以外の年では球果の着生は少なかった(平均0.0~6.8個)。また、個体毎の各年の球果着生数に基づいた主成分分析では、豊作年間での個体による結実量の年次変動パターンの違いが見られた。成長率(2012~2022年の胸高直径の増加率)や個体の結実特性(主成分スコア)には空間的な構造も見られ、特定のエリアで成長率や結実量の多い個体が分布する傾向が認められた。