| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-106 (Poster presentation)
多くの人がスギ、ヒノキの花粉症に罹患している。花粉生産量は年変動を示すため、毎年の花粉発生量を高精度に予測することが求められている。これまでスギとヒノキの花粉飛散量はおおむね同調することが知られているが、近年では同調しない年も報告されている。スギ、ヒノキの花粉生産量は前年夏の気象条件の影響を受けるが、スギとヒノキで影響を及ぼす気象要因が異なる可能性がある。本研究では、高知市のスギとヒノキが混在する林分において雄花と種子生産に対する前年夏の気温および飽差の影響を評価した。リタートラップを用いて雄花、種子の生産量を推定した。12年間観測した雄花生産については、スギでは前年7~8月の平均気温が高いほど雄花生産が増大する傾向が認められたが、ヒノキでは気温の影響は有意でなかった。一方、ヒノキでは前年6~7月の飽差が高いほど雄花生産が増加する傾向が認められたが、スギでは飽差の影響は有意ではなかった。25年間観測した種子生産についても雄花生産と同様の傾向が認められ、スギで前年の気温、ヒノキで前年の飽差の影響が有意であった。これらの結果より、本調査地においては、繁殖の豊凶を決定する気象条件がスギとヒノキで異なることが明らかになった。気象台の高知観測所では、2001~2024年において夏場の気温は上昇するものの、飽差については減少傾向にあった。調査地域においては気温上昇にともなって海洋での蒸発が増加し、陸地への水蒸気の供給が増大することで飽差が減少し、ヒノキの繁殖を抑制することが示唆された。