| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-108  (Poster presentation)

ハクサンボウフウの発芽特性の生育地タイプ・山域間比較
Comparative study of germination traits of Peucedanum multivittatum across habitat types and mountain regions

*和久井彬実(富山県中央植物園), 工藤岳(北海道大学)
*Akimi WAKUI(Botanic Gardens of Toyama), Gaku KUDO(Hokkaido Univ.)

高山環境では、植物の生活史は雪解けの時期に強く規定されている。高山植物の実生は、春季の低温や霜による被害を避けつつ、限られた生育期間で越冬可能なサイズまで生長する必要があり、適切なタイミングで発芽することが重要である。これまでに、風衝地と雪田という対照的な環境において、高山植物の種間および種内で発芽特性が変異することが報告されてきた。一方で、雪田に特化した植物においても、雪解け傾度に沿った発芽特性の変異が存在する可能性がある。また、高山植物の生活史に関する多くの先行研究は、単一の山域を対象としており、山域間での違いについては、十分に調査されていない。本研究では、雪田生高山植物ハクサンボウフウを対象に、同一山域内における雪解け傾度に沿った個体群間差と、異なる山域間の差異に着目し、発芽特性の変異を調査した。
種子は2022年と2023年の秋に、北海道の大雪山と富山県の立山の計17個体群から採取した。2022年に採取した種子は、低温処理として0℃暗環境に2か月間置いた後、20℃明期/10℃暗期の変温環境に移し、更に3週間発芽を促した。2023年に採取した種子は、① 0℃暗環境に11週間(低温処理のみ)、② 2022年の実験と同条件(低温処理あり)、③ 20℃明期/10℃暗期の変温環境に11週間(低温処理なし)の3条件下に置き発芽を観察した。
発芽試験の結果、全個体群の種子に低温処理が必要であることが確認された。ほとんどの個体群の種子が、0℃の暗所条件下でも発芽を開始し、本種は積雪下で発芽することが示唆された。大雪山では生育期間が短い個体群ほど発芽開始が早まる傾向を示し、融雪時期と発芽特性との関連性が示唆された。立山では、生育期間が同程度であっても、大雪山産種子より発芽が遅延する傾向が認められた。これらの結果は、高山植物の発芽特性は、雪解け傾度の影響を強く受けており、更に山域間の地域的な環境条件や進化的背景を反映していることを示唆している。


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