| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-111  (Poster presentation)

ハイマツの結実豊凶と温暖化の関係:標高間での比較および30年前との比較から
Relationship between the masting of Japanese stone pine and global warming: a comparison of patterns at different elevations, and with 30 years ago

*直江将司(森林総合研究所), 鈴木まほろ(岩手県立博物館), 梶本卓也(新潟大学)
*Shoji NAOE(FFPRI), Mahoro SUZUKI(Iwate Prefectural Museum), Takuya KAJIMOTO(Niigata Univ.)

植物の結実豊凶(マスティング)は、種内や種間で結実が同調することで起きる。近年では気候変動による結実豊凶の変化や、豊凶の変化に伴う種子食・種子散布動物への影響が注目されている。しかし、気候変動の影響を受けやすい高山生態系での研究は限られており、特に生物多様性ホットスポットを有する東アジアで少ない。また、気温と関係の深い標高・地形と結実豊凶との関係を調べた研究は少ない。本研究では、亜高山帯の上に植生帯を構成し、種子がホシガラスやクマなどの重要な餌資源となっているハイマツに注目し、30年前と比較した結実豊凶の変化(調査1)、豊凶と標高・地形との関係および豊凶の空間同調性(調査2)を評価した。

調査1では秋田駒ケ岳の2サイトにおいて、過去(1984-1996)と現在(2013-2025)の結実豊凶を比較した。調査2では秋田駒ケ岳、岩手山、八幡平、早池峰において、現在の結実密度と標高、尾根・斜面地形、方位、地際直径との関係を空間自己相関を考慮したSpatial GLMMで解析した。また結実密度の水平・標高方向の空間同調性を解析した。それぞれの調査において、結実密度は各年のシュートについた球果痕跡数で評価した。調査1において、結実密度の変動係数(CV)は過去で平均1.17、現在で1.34であり、現在で若干増加していた。また結実密度は現在では30%ほど低下していた。調査2において、結実密度は尾根、また北方位で高いことが明らかになった。結実豊凶は広い範囲で弱く同調していた(水平方向で約20km、標高方向で約700m)。

一連の研究から、ハイマツの結実密度は30年前と比べかなり低下していること、また結実豊凶が水平・標高方向に広く同調していることから、広い範囲でハイマツの更新や分布を広げる機会が減少し、動物の餌資源としても減少している可能性が示された。また、尾根や北方位で結実密度が高いことから、散布種子の供給源、また動物の餌資源となる場所に偏りがあることが明らかになった。


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