| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-113 (Poster presentation)
木本植物は成長にともなって光合成速度や窒素濃度などの葉の形質を変化させる. これらの変化は幼木と成木の生育環境が異なることへの適応であると考えられてきた(Barton 2024, Thomas & Winner 2002). しかし, 成長にともなう環境変化が小さくても形質変化は起こり(Ishida et al. 2005, Mediavilla & Escudero 2003, Mediavilla et al. 2014, Sendall & Reich 2013), 形質変化を引き起こす他の要因の存在が考えられる. 本研究では, 強光環境で生育させた落葉広葉樹の幼木と成木の葉の形質の違いを調べ, 葉の経済スペクトラムの背景にある形質の連動パターン(Onoda et al. 2017)を考慮した数理モデルによって成長にともなう変化の意義を考察した. 遷移初期種のオオバアサガラ, 遷移中期種のアカシデ, クマシデ, 低木のガマズミの4種での測定の結果, 葉面積あたりの乾重量(LMA)と葉面積当たりの窒素量(Narea)は全ての種で成木が高い傾向にあった. 一方で, 葉重当たりの窒素濃度はクマシデだけで成木で高く, 葉面積当たりの光合成速度はオオバアサガラだけで成木の値が有意に高く, 窒素利用効率はオオバアサガラ以外は幼木で高くなり, 種間で変化の方向が一定しなかった. 数理モデルでは, LMAが増加すると, 葉肉細胞の表面積が増加して光合成速度へ正に作用するが, 細胞壁が厚くなって葉肉コンダクタンスとルビスコ量が減少し負に作用するという背反する効果のバランスから, 同じNareaのときに光合成を最大にするひとつの最適なLMAをとることが予想された. さらにNareaが低いほど最適な窒素利用効率が高く, 逆にNareaが高いほど最適な光合成速度が高くなることが予想された. LMAとNareaのグラフ上では, 測定された幼木と成木のデータは最適な曲線の近くに分布した. 形質によって種間差はあるものの, 全体としてNareaの低い幼木では窒素利用効率を, Nareaの高い成木では葉面積当たりの光合成速度を高める戦略を採っていることが示唆された.