| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-114 (Poster presentation)
低温環境が特徴の高山帯では土壌栄養塩が乏しく、植物種間で資源獲得競争が生じるため、資源分割が共存を支える重要な機構となる。本研究では、高山帯に生育する外生菌根(ECM)種とエリコイド菌根(ERM)種を対象に、細根における吸収・滲出速度、分解酵素活性、形態特性、菌根感染率などの栄養塩獲得に関わる細根機能を比較し、種間の資源分割機構の解明を目的とした。
調査は2024-2025年夏季に信州大学農学部西駒演習林山頂(2,672 m a.s.l.)で実施した。対象種はECM種のハイマツとERM種のコケモモの2種とした。現地で細根を採取し、無機態N・P(NH4+、NO3-、PO43-)、有機態N(グリシン)の吸収速度と炭素滲出速度を測定した。あわせて、比根長などの形態特性、菌根感染率、分解酵素活性を評価した。
NO3-吸収速度はハイマツで有意に高く、有機態NおよびPO43-吸収速度はコケモモで有意に高かったことから、種間で栄養形態に基づく資源分割が生じている可能性が示唆された。また、滲出速度およびPHO活性はハイマツで有意に高かったことから、ハイマツは根圏への炭素投資によって土壌N・P利用可能性を向上させ、低い吸収能を補っていた可能性がある。構造方程式モデリングの結果、ハイマツでは滲出物がNH4+および有機態N吸収に強く関連していた一方、コケモモでは比根長がNH4+吸収に、比根長・滲出・PHO活性がPO43-吸収に関与していた。以上より、ハイマツはNO3-を吸収基盤としつつ滲出を介した「根圏改変型」戦略によって他の栄養塩利用を補助し、コケモモは有機態Nを主要N源としながら、高い比根長による「直接吸収型」戦略によって無機態N・P獲得を最適化していた。両種の資源分割は、単なる栄養塩嗜好性の違いだけではなく、主要栄養源以外の獲得を細根機能の調整によって補完することで成立している可能性がある。