| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-116 (Poster presentation)
立木が自立したシュートで空間を獲得する一方で、木本性つる植物(以下:つる植物)はシュートの支持を他の構造に依存することで、少ない資源量で空間獲得を実現するとされる。しかし、野外環境でつる植物が効率的な空間獲得を実現しているかや、支持物の空間獲得への影響に関する定量的評価は少ない。本研究は森林に生育するつる植物を対象に、支持物獲得を通した空間獲得の効果の検証を目的として、茎巻付きで支持物を得るサルナシの当年性探索シュートの計測を行った。
調査は北海道大学苫小牧研究林の林冠クレーンを利用して行った。2021年夏に探索シュート794本の長さ、基部直径、支持物獲得の指標として巻付きの有無、地上高、光環境を計測した。また、翌春に計測シュートから159本を選択し、出芽した新探索シュートの数を記録した。さらに、シュートの最高点と最低点、シュート先端、新シュート出芽位置、の基部に対する仰俯角と距離を記録し、基部を原点とした平面上でシュートの形状を表した。シュートは形状から、上向き(最低点0)、下向き(最高点0)、中間(最高点が正、最低点が負)に分類した。
支持物を獲得しているシュートはそうでないシュートと比べ同じ基部直径では長く、上向きに分類される確率が高かった。上向きシュートは全体の57%(90シュート)を占め、そのうち74%(67シュート)は支持物を獲得しているシュートだった。上向きシュートはそうでないシュートと比べ、長さの増加に伴う高さ獲得が大きかった。これらより支持物獲得は、シュートの直径と長さの相対成長関係と形状への効果によって高さ獲得に貢献すると考えられた。また、出芽シュート数はシュート長と正の相関を示し、上向き、中間、下向きの順で多かった。支持物獲得は出芽シュート数を減少させると推定された。
発表では、上記の結果に森林垂直構造に伴うシュートの変化を合わせ、森林内のサルナシの空間獲得の効率や戦略を考察したい。