| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-124 (Poster presentation)
針葉樹は古生代ペルム紀に初期グループが確認され、現生の科や属は中生代から分岐が確認され、新生代第4紀以降に多様化が加速した。古い分岐年代の針葉樹は長い針葉が密生した形状なのに対して、より新しい分岐年代をもつ針葉樹には、うろこ状の葉が重なり合う形状を持っているものが見られる。このような葉の形態変化は乾燥ストレスへの適応であるとの先行研究がある。
一方、外部の形状が異なる針葉樹の葉は、内部構造も大きく異なっていると予想される。葉の内部構造は、光の獲得および光合成能力に大きな影響を与える。光合成機能の維持は、植物の成長を支える最も基本的な活動であることから、乾燥ストレス耐性を持つことに加えて、光獲得や光合成能力を最大化することも、針葉樹における葉の構造変化の方向性を決定づける要因の一つであった可能性がある。
針葉樹における、光獲得や光合成能力と分岐年代との関係を明らかにするため、2023年8月・12月に大阪公立大学附属植物園で調査を行った。分岐年代が異なる7種の針葉樹(コウヤマキ、コウヨウザン、タイワンスギ、メタセコイア、スギ、スイショウ、ヌマスギ)を対象とし、日当たりのよい樹冠部から枝のサンプリングを行い、葉の分光特性、光合成機能、内部構造を解析した。その結果、400-700nmの光合成有効放射の吸光度、光合成機能、内部構造いずれにも顕著な種間差があった。ただし、分岐年代の新旧による傾向は明確ではなかった。葉肉が厚い種は吸光度が高く、それにはクロロフィルやカロテノイド色素量が多いこと、表皮や下皮が厚いことが関係していた。また、葉肉が厚い種は、赤色に対する緑色の吸光度が高かった。一方、光合成速度は、葉肉の厚さとは直接関係していなかった。以上の結果から、針葉樹において、葉が頑健になるための構造特性(厚い葉肉、表皮、下皮)は光の効率よい吸収、特に緑色光の吸収増加をもたらす一方、光合成速度の増加には直接つながらないことが明らかになった。