| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-126 (Poster presentation)
過去20年において、森林の構造複雑性に関する様々な定量化手法が開発されてきた。その中にはキャノピー構造のフラクタル特性に着目した先行研究も一定数見受けられてきたが、その多くはBox-Counting法を用いてキャノピー全体を一つのフラクタル次元値で表す評価方法が採用されてきた(ここでこのフラクタル次元をDFと表す)。この特徴より、その評価指標値はスカラー値で植物構造物の方向性や配置に関連する空間情報を反映したものではない。そこで、本研究において筆者らはDFに変わる代替評価指標として方向性フラクタル次元(DDF={DDFx,DDFy,DDFz)を考案し、初めて陸域生態系の野外フィールドに適用することを試みた。この中で、筆者らは異なる立木状態を持つ自然林と人工林を研究対象とし、キャノピー構造の違いだけでなく、下層植生の有無にも注目することで先行研究との着目点の違いを意識した。本研究を遂行する上では、3次元の点群計測を実施し得られたデータをもとにフラクタル次元値を算出した。解析の結果、研究対象とするすべての森林でDDFは植物構造物の各方向別の空間配置を反映した値として見積もられ、特に、鉛直方向(z)における次元値(DDFz)は水平方向の次元値(DDFx, DDFy)およびDF値よりも大きな値を示すことがわかった。このことは、森林の幾何学的構造特性が鉛直方向に顕著に現れることを示している、といえる。また、自然林におけるDDF値は人工林のそれに比べ林分状態によるばらつきはあるが平均的には大きいことがわかり、ここでは下層植生の存在が構造複雑性に重要な役割を果たしていることが示唆された。以上より、方向性フラクタル次元の導入は森林の構造複雑性を評価する上で有益な指標になる、と考えられる。