| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-127  (Poster presentation)

火山性強酸性土壌に生育するツクシテンツキの元素組成:産地間および近縁種間比較
Elemental composition of Fimbristylis dichotoma subsp. podocarpa in highly acidic solfatara soils: Comparison among sites and related taxa

*山本晃弘(広島市植物公園), 井上竜輔(広島大学), 青島大祐(広島大学), 長澤耕樹(農研機構), 丸山隼人(北海道大学), 渡部敏裕(北海道大学), 中坪孝之(広島大学), 和崎淳(広島大学)
*Akihiro YAMAMOTO(Hiroshima Botanical Garden), Ryusuke INOUE(Hiroshima Univ.), Daisuke AOSHIMA(Hiroshima Univ.), Koki NAGASAWA(NARO), Hayato MARUYAMA(Hokkaido Univ.), Toshihiro WATANABE(Hokkaido Univ.), Takayuki NAKATSUBO(Hiroshima Univ.), Jun WASAKI(Hiroshima Univ.)

ツクシテンツキは、九州地方の噴気活動が続く火山性強酸性土壌に特異的に分布するカヤツリグサ科植物である。本種は低pHおよび高アルミニウム(Al)環境下でも良好に生育するが、近縁種との生理生態的特性の比較や、産地間における元素吸収特性の差異については十分に解明されていない。本研究では、本種の分布制限要因を明らかにすることを目的とし、ハビタットの異なる近縁種(テンツキ、イソヤマテンツキ、シオカゼテンツキ)との種間比較、および本種の産地間における比較解析を行った。
採取した成熟葉および風乾土壌を試料とし、植物体はHNO3-H2O2で分解し、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて元素分析を行った。土壌のpH(H2O)はpHメーターを用いて測定した。
種間比較では、ツクシテンツキはAl、鉄(Fe)、硫黄(S)の体内濃度が高く、テンツキはマンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、カドミウム(Cd)、イソヤマテンツキおよびシオカゼテンツキはナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)が高い値を示した。各種の元素組成はそれぞれの生育環境を反映していた。
ツクシテンツキの産地間比較において、生育土壌のpHには有意な差は見られなかった。一方で植物体内元素濃度を比較すると、窒素(N)、Ca、銅(Cu)は霧島産が別府産よりも有意に高く、逆にAl濃度は別府・阿蘇産が有意に高かった。
強酸性土壌において生存の鍵となるAl害に対し、本種は体内にAlを大量に吸収しない「排除型」の戦略をとることで耐性を獲得していると考えられる。本種は低pHやAlに対する生理的耐性を備えているが、産地間で元素吸収特性に差異が見られたことやその限定的な分布を考慮すると、地熱や火山性ガスへの耐性といった他の生態学的要因も分布制限に関与している可能性があり、今後さらなる検討を要する。


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