| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-128 (Poster presentation)
樹木枯死の生理メカニズムを明らかにするため、樹木個体の通水特性を把握することは重要である。特に末端枝は、樹木個体で最も多くの流路長を占める一方、日光や風を受けやすく、樹体内で最も脱水しやすい器官である。しかし、従来の樹液流速センサーは主幹から側枝を対象としたものがほとんどであり、末端枝において、非破壊的な連続測定によって樹木の水ストレス応答を評価した例は極めて少ない。本研究では、新たに開発した超小型樹液流速センサーによって末端枝の樹液流速を測定し、既存センサーで測定した側枝の樹液流速と比較した。対象木は小笠原諸島に分布するテリハハマボウ(Hibiscus glaber)とした。末端枝のY字分岐の前後に3式(末端枝1:Y字の基部、末端枝2・3:Y字の二股部)の超小型樹液流速センサーを設置し、熱消散法によって樹液流速を求めた。末端枝のさらに上流側に位置する側枝基部に、市販の熱比法センサー(側枝1)と熱消散式センサー(側枝2)を取り付けた。茎断面の観察に基づく実測断面積をもとに樹液流速を樹液流量Qへ換算した。樹液流量の大小関係はQ_側枝1 > Q_末端枝1 > Q_側枝2 ≈ Q_末端枝3 > Q_末端枝2の順であった。超小型樹液流速センサーのプローブ長は3 mmであり、茎径12 mmの末端枝では辺材表層のみを計測する。一方、側枝2樹液流速センサーのプローブ長は10 mmであり、茎径27 mmの側枝基部において辺材のほぼ全域を計測する。機能する道管は辺材表層に多く分布することから、Q_末端枝1とQ_末端枝3は辺材断面平均より高い流速を計測し、流量を過大評価した可能性がある。従って、Q_末端枝1がQ_側枝2を上回ったと考えられる。クロス相関解析では、側枝2と末端枝3の間に明瞭なタイムラグが認められた。タイムラグ0から30分において、相関係数はr>0.8であり、側枝基部から末端枝への水移動の伝搬を反映していると考えられた。本手法により、末端枝の水分動態の連続評価が可能になった。