| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-129 (Poster presentation)
我々は最近,日本産野生植物標本を対象としたX線蛍光分析(XRF)により,モチノキ属(Ilex)樹木の複数の樹木種が葉中のMn濃度が1%を超えるMn超集積植物であることを見出した(Mizuno et al, Eco. Res. 2024). モチノキ属25種・619標本を含む計2,655標本を解析した結果,9種で葉中Mn濃度が10,000 mg kg⁻¹を超え,そのうち6種(ソヨゴ,イヌツゲ,ハイイヌツゲ,クロガネモチ,モチノキ,ヒメモチ)では複数の標本で超集積が確認された。これらの超集積は,蛇紋岩土壌や鉱山周辺といった特殊環境ではなく,一般的な森林土壌条件下で生じていた。日本でこれまで唯一確認されていたMn超集積植物であるコシアブラが低Caを特徴としていたのに対し,モチノキ属樹木ではこの傾向は認められず,一方リンの平均濃度が非常に低いという特徴が見られた。また本科植物のZn平均濃度は一般植物の約4倍に達し,MnとZnの濃度間には有意な正の相関が認められた(Mizuno et al, Eco. Res. accepted)。さらに卓上型μ-XRFによる葉内分布解析の結果,MnおよびZnは主に柵状組織に局在し,亜鉛については上表皮への蓄積も確認された,一方,Caは海綿状組織や維管束周辺に多く分布するなど,元素ごとに異なる空間分布が明らかとなった (Kamemura et al, Eco. Res. under review)。性質の異なる二つのMn超集積植物(コシアブラおよびモチノキ属樹木)の発見は,今後日本の土壌における植物のMn獲得機構の解明に寄与するものと考えられるほか,植物が一般土壌で高濃度に金属を集積することの意義について多大な示唆を与えるものと考えられる。