| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-133 (Poster presentation)
花蜜内に生息する細菌や真菌は、自身の代謝により花蜜の物理化学特性を改変することで、送粉者の行動や植物の結実へ間接的に影響を及ぼす。近年では、これらの花蜜内微生物の機能を利用して作物の送粉を向上可能かが注目されているが、その効果はほぼ未解明である。本研究では、多くの植物種の花蜜でみられる細菌(Acinetobacter nectaris)と真菌(Metschnikowia reukaufii)の導入がソバの送粉を促進するかを調べた。ソバは異型花柱花をもつ自家不和合性植物で、多様な昆虫に送粉を依存している。野外調査は2025年6月と9月に長野県飯島町のソバ畑(6月:12ヶ所、9月:8ヶ所)で実施した。導入した微生物は2024年に同町でホタルブクロの花蜜から単離し、2025年に実験室内で培養した。培養した微生物は水道水で希釈し、晴れた日の午前中にハンドスプレーを用いて、各ソバ畑内に設置した実験プロット(1×5 m)に400mlほど散布した(平均細胞数、細菌:5.1×109/m2、真菌:3.1×108/m2)。導入処理は、(1)細菌、(2)真菌、(3)細菌+真菌、(4)コントロール(培地と水)とした。微生物導入は各畑5回実施し、導入日の日中と夜間に昆虫の訪花頻度、収穫直前に結実率を調査した。その結果、微生物の導入は昆虫の訪花頻度を約35%増加させていた。特にミツバチとハナアブは細菌、夜行性ガ類は真菌、野生ハナバチは両者に正の応答を示した。結実率は、微生物の導入による訪花頻度の増加に伴って20%ほど増加していた。以上から、花蜜由来の微生物は作物の送粉を促進できることが明らかになった。だが導入した微生物はソバ花蜜に定着しておらず、培養中の代謝由来の揮発性物質に送粉者が応答したと考えられる。また本実験は単一圃場内で全処理を施しており、圃場内での送粉者の訪花場所の選択によって結実率が増加した可能性が高い。そのため、圃場全体への微生物もしくは微生物由来の化学物質の散布実験により、今後、圃場レベルでの収量増加が可能かを明らかにする必要がある。