| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-135  (Poster presentation)

糞虫によるヤマモモ種子の垂直二次散布
Vertical-secondary seed dispersal of Morella rubra seeds by dung beetles

*渡邉彩音(名古屋大学), 岸本圭子(龍谷大学), 中川弥智子(名古屋大学)
*Ayane WATANABE(Nagoya Univ.), Keiko KISHIMOTO(Ryukoku Univ.), Michiko NAKAGAWA(Nagoya Univ.)

温帯や熱帯域でバイオマスが豊富な分解者である糞虫(食糞性コガネムシ)は、果実食動物の糞を地面に埋める際、副次的に糞に含まれる種子を垂直方向に二次散布する。このような垂直二次散布は、種子を乾燥や食害者から保護し、発芽を促進するといわれており、植物にとって質の高い種子散布である可能性がある。そこで本研究では、低地照葉樹林において、糞虫によるヤマモモ種子の垂直二次散布の検証を行った。ヤマモモは照葉樹林の主要構成種で、その比較的大きな種子はサルの頬袋および糞を介して散布される。種子は乾燥に弱く、発芽には種子の埋設が非常に重要であると考えられる。2024、2025年に屋久島の低地照葉樹林で、ピットフォールトラップを用いて糞虫を採集し、ヤマモモの果実期(5月下旬~6月中旬)に調査地で活動する糞虫の種組成を調査した。また、種子に見立てたビーズを混ぜて作成した試験用の糞を糞虫に供試するパイプ実験を行い、ビーズの埋設率とその深さを調査した。その結果、調査地ではエンマコガネ類が優占し、その中で最も体サイズが大きく、サル糞に多く誘引されたカドマルエンマコガネ(以下カドマル)がヤマモモの種子散布に関わっている可能性があると考えた。ビーズの埋設率は、カドマルを5匹供試した場合で8.7%、10匹の場合で32.6%であり、10匹の方が有意に高かった。ビーズの埋設深さの平均±SEは、5匹の場合で2.6±0.4 cm、10匹の場合で2.6±0.2 cmで、個体数による差はなかった。これらの結果から、カドマルによるヤマモモ種子の垂直二次散布の存在が示唆され、先行研究で大型種子の二次散布が報告されているオオセンチコガネのような大型種以外の糞虫でも、二次散布に貢献している可能性が示された。また、糞虫が埋設したビーズの深度分布は、発芽実生の内果皮の深度分布とおおむね一致していたことから、糞虫による垂直二次散布は、ヤマモモの種子発芽に貢献していると考えられる。


日本生態学会