| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-140 (Poster presentation)
多くの陸上植物は、葉が傷害や植食を受けると、みどりの香り(green leaf volatiles; GLVs)と呼ばれる揮発性化合物を放出する。GLVsに関しては、Spodoptera littoralisではGLVsによって摂食や成長が抑制されるという報告がある。また植食者の捕食寄生者がGLVsに応答する場合も複数報告されている。我々はカイコにおいて植物のGLVs生合成を抑制する絹糸腺由来酵素 fatty acid hydroperoxide dehydratase(FHD)を同定し、その遺伝子の類似配列がチョウ目昆虫のゲノムに広く保存されていることを示した(Takai et al. 2018)。本研究では、アワヨトウ幼虫を用いてFHDの防衛機能を明らかにするため、FHD遺伝子ノックアウト系統(FHD-KO)を作出した。GCMS解析でFHD-KO被害トウモロコシ株では野生型被害株よりもGLVsの放出量が有意に多く、アワヨトウFHDのGLVs抑制機能が確認できた。次に、FHDの直接防衛への影響について調べた。FHD-KOと野生型の幼虫は、人工飼料を餌とする条件では生育に有意な差は見られなかったが、トウモロコシ葉を餌とした場合、FHDのノックアウトによって若齢幼虫の生育に負の影響が観測された。さらに、FHDの間接防衛への影響についても検討した。アワヨトウ幼虫寄生蜂であるカリヤサムライコマユバチを用いて、食害株に対する誘引性を評価した結果、FHD-KO被害株と野生型被害株との間で寄生蜂の誘引応答に有意な差は認められなかった。これらの結果から、アワヨトウFHDは、GLVsの直接防衛機能を抑制していると考えられる。今後は、アワヨトウの生育に影響すると考えられる腸内のGLVs関連化合物の解析を行うとともに、間接防衛に関しては、本寄生蜂は揮発性物質と寄生成功を連合学習するので、GLVsを連合学習した個体を用い、FHDによるみどりの香り抑制の意義を検証する予定である。