| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-146 (Poster presentation)
クワズイモショウジョウバエ(Colocasiomyia alocasiae)とニセクワズイモショウジョウバエ(C. xenalocasiae)は、宿主植物のクワズイモ(Alocasia odora)の花序(果序)で採餌・交尾・産卵・幼虫の発育を行う。一方、両種のハエはクワズイモの主要な送粉者でもあり、緊密な共生関係を築いている。これらのハエは、クワズイモの花序以外で観察されることがほとんど無いことから、生涯の大半を花の上で過ごし、食餌もクワズイモに強く依存していると考えられる。前回大会までには、クワズイモの中性花が糖とアミノ酸類を含む花蜜を分泌しており、ハエの採餌対象となっていることを報告した。しかし、昆虫の繁殖や発育に不可欠なタンパク質や脂質の供給源については未解明であった。
著者らは、ハエが雄花の表面を削り取るようにして採餌する行動を発見していた。今回、雄花の表面を紙片で拭き取り、飢餓状態のハエに与えたところ、紙片からの採餌行動が確認された。次に、採餌対象について植物組織学的な由来を探った。その結果、葯内の特定の細胞が崩壊し、その内容物が、雄花表面へと露出・供給されるプロセスが明らかとなった。さらに、雄花表面の抽出物を用いたメタボローム解析によって、当該組織に由来すると推定される成分を化学的に同定した。本発表では、葯の組織崩壊を伴う資源供給プロセスと、それによってもたらされる「未知のタイプの報酬」の化学的実体について報告する。