| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-149  (Poster presentation)

森林再生活動に伴う森林構造の変化は哺乳類の過ごし方を変化させるか?
Do forest structural changes induced by forest restoration alter how wild mammals use habitat?: Effects on species composition and behavioral patterns

*栃木香帆子(国立環境研究所, 東京大学), 鈴木紅葉(東京大学), 岡野航太郎(東京大学), 深澤圭太(国立環境研究所), 森章(東京大学)
*Kahoko TOCHIGI(NIES, UTokyo), Kureha F SUZUKI(UTokyo), Kotaro OKANO(UTokyo), Keita FUKASAWA(NIES), Akira S MORI(UTokyo)

近年、気候変動緩和策として森林の炭素隔離機能が注目され、世界的に森林再生活動が進んでいる。しかし、造成された森林の多くは種組成や構造が単純であり、複雑な森林が持つ捕食回避、資源利用、休息場などの多様なニッチを十分に提供できていない可能性がある。さらに、従来の研究は主に動物の在不在や分布に基づいて評価されており、どの構造がどの行動と結びつくのかといった具体的なニッチ利用は解明されていない。そのため、森林の生息地機能を行動という観点からも評価する必要がある。
そこで本研究では、森林構造の変化が哺乳類の行動パターンに及ぼす影響を明らかにし、行動と結びつく構造要因を特定することを目的とした。調査は、北海道の知床国立公園で実施した。知床では、過去に造成された同齢・単一種の高密度人工林を、ギャップ造成や間伐により針広混交林化する森林再生活動が行われている。本研究では5つの森林構造タイプ(天然林ギャップ区・対照区、人工林ギャップ区・間伐区・対照区)において、自動撮影カメラにより、2024年5~9月に6種の哺乳類を記録し、6つの行動区分(移動、探索、採食、休息、身づくろい、警戒)の滞在時間割合を算出した。さらに、ドローンLiDARデータを取得し、森林構造指標を算出した。
森林構造タイプ―森林構造指標―動物の行動パターンについての構造方程式モデリングの結果、人工林のギャップ造成により、探索・採食行動の時間が増加したことが明らかになった。これらの行動変化には垂直方向の構造的多様性や樹冠表面の凹凸といった要因が関係していた。光環境の向上によって利用可能な食物資源が提供されたためと考えられる。また、人工林は総じて天然林より構造が単純であったが、哺乳類の行動パターンは天然林に類似していた。構造の異なる人工林(ギャップ区・間伐区・対照区)が相補的に機能し、天然林に近い生息地機能を発揮している可能性が考えられる。


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