| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-151  (Poster presentation)

アカネズミの超音波コミュニケーション
Ultrasonic Communication in Wild Mice

*松本結, 鈴木俊貴(東京大学)
*Yui MATSUMOTO, Toshitaka SUZUKI(The University of Tokyo)

げっ歯類は、超音波帯域を含む幅広い周波数帯域の音声を発する。これらの音声はさまざまな文脈で観察され、とりわけ個体間のコミュニケーションにおいて重要な役割を担うと考えられている。しかし、これまでの研究の多くは実験室環境下で繁殖・飼育された系統を対象としており、野生個体の音声コミュニケーションの実態は十分に明らかになっていない。本研究では、日本に広く生息するアカネズミを対象に、社会的条件の違いによる超音波発声の変化と、音響特徴を明らかにすることを目的とした。アカネズミを単独飼育したケージと、オス・メス2個体を同居させたケージにおいて超音波発声を録音し、音響特徴を比較した。その結果、単独飼育条件に比べ同居条件では超音波帯域の発声量が有意に多く、音響構造もより複雑であることが明らかとなった。特に、オス・メス同居条件で観察された音声は、周波数帯域、発声時間、周波数変調パターンなどの音響特徴に基づき、5つの音声タイプに分類できた。さらに、これらの音声タイプは長野県および宮崎県に生息する集団間で類似しており、地域を越えて共有される安定した音響構造である可能性が示された。これらの結果は、アカネズミが複数の超音波発声を状況に応じて使い分けていることを示唆するものであり、自然集団におけるげっ歯類の超音波コミュニケーションの理解に寄与する。今後は、各音声タイプと求愛場面における行動との対応関係について詳細に検討する予定である。


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