| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-155 (Poster presentation)
不妊虫放飼法(Sterile Insect Technique; SIT)は、人工的に大量飼育し不妊化した害虫を定期的に放飼することで、野生個体間の交尾を阻害する防除手法である。SITの有効性は、不妊雄が野生個体の交尾をどの程度妨害できるかに依存している。しかし、高線量の放射線照射による不妊化は、さまざまな形質に負の影響を及ぼす可能性がある。なかでも不妊雄の野生雄に対する交尾競争力は、SITの成否を左右する最も重要な要因である。日本では現在、ガンマ線照射による不妊化がセグロウリミバエのSITによる防除において実施されている。本種は琉球諸島内で分布を拡大し、地域農業に深刻な影響を与えている。SITの成功には高品質な不妊雄の放飼が不可欠であることから、本研究では雄の交尾競争力に対する照射の影響を評価した。
十分に性成熟した、非照射雌30頭、非照射雄30頭、および羽化4日前にガンマ線70 Gyを照射した雄30頭を、網室(2×2×1.7 m)内に同時に放飼した(n=12)。交尾時間帯まで約半日間放置し、その後、交尾しているすべてのペアを回収して、交尾雄が被照射個体か否かを判別した。交尾競争力はRelative Sterility Index [RSI=照射雄の交尾数/(照射雄の交尾数+非照射雄の交尾数)]として算出した。1網室あたりの平均交尾率(交尾雌率)は約0.68であり、多くの放飼個雌が交尾に成功した。平均RSIは約0.45で、95%信頼区間(0.43–0.47)は0.5を含まず、不妊雄の交尾数は非照射雄より有意に少なかった。
チチュウカイミバエのSITでは、平均RSIが0.2を下回る場合に実用性が損なわれるとされる。本研究で得られたRSI平均値はこの基準を上回っており、70 Gyで処理したセグロウリミバエ不妊雄は、放飼数の増加によって十分に防除効果を発揮するものと考えられる。