| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-162 (Poster presentation)
野生動物の個体数密度の推定は,生態学における最も基本的な課題である.過去20年間ほどの間に自動撮影カメラが普及し,非標識個体群を対象とした多様な密度推定モデルが提案されてきた.しかし,これらのモデルはいずれも「毎日の活動ピーク時に全個体が同時に活動する」という強い仮定に依存している.自然環境下では,動物の活動は気象条件,捕食者,人間活動などに応じて柔軟に変化するため,この仮定は必ずしも満たされない.本研究では,自動撮影カメラによる動物の検出を時間点過程として定式化した連続時間RESTモデルを開発した.本モデルは,活動個体密度(各時点でカメラにより検出可能な個体の密度)の時間変化を直接的に推定する.時間変動は,日周活動を表す周期成分と,それ以外の変動を捉える時間成分によって記述した.異なる密度水準および時間変動を仮定したシミュレーションによる性能評価を行ったのち,房総半島で得られたデータに対して,周期成分に単純なトレンド項を加えたモデルを適用した.シミュレーションの結果,本モデルは全シナリオにおいて活動個体密度の時間変動を良好に再現した.一方,従来のモデルは時間変動を平均化するため,ピーク時の活動個体密度を過小評価する傾向が示された.房総半島データへ適用したところ,2018年9月から11月にかけて,シカおよびネズミ類で活動個体密度の増加,アナグマで減少が検出された.一方,キョン,イノシシ,タヌキ,アライグマ,ハクビシン,ウサギ,サルでは顕著な変化は認められなかった.本モデルは,「全個体が調査期間中に少なくとも一度同時に活動すればよい」という,従来よりも緩やかな仮定の下で密度推定を可能とする.活動個体密度の連続的な時間変化を推定する本モデルは,細かな時間スケールでの個体群変動の定量化を可能にし,個体群動態や環境変化への応答に関する理解を深める新たな枠組みを提供する.