| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-167  (Poster presentation)

生態音響モデルの迅速開発に向けた埋め込み特徴量データベースの構築
Building an Embedding Feature Database to Accelerate Ecoacoustic Model Development

*岡本遼太郎(国立環境研究所)
*Ryotaro OKAMOTO(NIES)

ネイチャーポジティブの実現に向け、企業や自治体など専門家を有さない多様な主体による生物多様性モニタリングが求められている。鳥類や昆虫類の鳴き声を対象とする音響観測は、長期かつ広域の生物相を低コストで記録できる手法として注目されているが、データ解析に大きな課題がある。近年、深層学習による鳴き声認識モデルが多数開発されているものの、その多くは北米・欧州の種や録音環境で訓練されており、日本の生物種や多様な録音条件では十分な精度が得られない。地域や環境に適応したモデルを開発するには大量の教師データ作成と計算資源が必要であり、現場への導入は困難であった。

本研究では、この課題を解決するため、音声データの管理からモデル作成までを一貫して行えるウェブプラットフォーム「Echoroo」を開発した。Echorooは、グループ内での音声データ共有、基盤モデルの実行、オリジナルの軽量モデルの訓練をブラウザ上で完結できるウェブアプリケーションである。本研究では、幅広い生物種の鳴き声で訓練された基盤モデル(BirdNET、Perch)を用いて録音データを埋め込み特徴量ベクトルに変換し、「似た音」を数値的に検索可能なデータベースを構築する機能を実装した。さらに、国際的な生物音響プラットフォームXeno-Cantoと連携し、Xeno-Cantoの音声IDを入力することでデータベース内から類似音声を検索できる機能を備えている。

このデータベースを活用することで、類似音声の検索結果から対象種の存否を迅速にスクリーニングできるほか、対象種に類似した音声のみに絞って効率的に教師データを作成し、少量のラベル付きデータから短期間でモデルを構築することが可能となる。本手法により、専門家でなくても地域や目的に合わせた鳴き声認識モデルを作成できる環境が整い、多様な主体による持続的な生物多様性観測の社会実装が促進されると期待される。


日本生態学会