| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-169 (Poster presentation)
本研究は、野生鳥獣による鳥獣害が深刻化する中、国指定天然記念物「臥牛山のサル生息地」に生息するニホンザル個体群の適正な管理方針策定を目的とした。臥牛山の個体群は餌付けにより増加し、農作物被害が深刻化した経緯があり、文化財の価値維持(保存)と被害対策による個体数抑制の両立が求められている。
演者らは、「臥牛山のサル生息地」に生息するニホンザル2群(A群、B群)を対象に、レスリー行列を用いたモンテカルロ・シミュレーションにより、今後20年間の個体数変動を予測し、管理施策の評価を行った。
モデルには、ニホンザルの齢構成に加え、オスが4歳ごろから出生群を離れ、ハナレオス集団を経て他群へ加入する生活史プロセスを組みこんだ。
管理目標(A群とB群の合計120頭、初期値138頭)達成に向け、「捕獲を実施しない場合」「非選択的捕獲」「オトナメス捕獲」「避妊処置」の4つのシナリオを比較した。
シミュレーションの結果、すべてのシナリオにおいてA群とB群の個体数は減少していくことが予測された。管理目標120頭は、「捕獲を実施しない場合」シナリオでも3年後には達成され、20年後には47頭に減少すると予測される。
個体数減少に最も効果が大きかったのは「オトナメス各1頭の捕獲」シナリオであり、20年後には合計12頭と最も急速な減少を示した。一方、「オトナメス各1頭に避妊処置」シナリオは、労力や費用などのコストが大きいにもかかわらず、個体数減少効果が非常に小さく、20年後には41頭となった。
以上の結果から、臥牛山のニホンザル個体群の増加抑制施策としては、オトナメスの捕獲を実施することが最も確実かつ効果的であると示唆される。今後は、定期的な個体数把握と状況に応じた管理目標の見直し、継続的な被害対策の実施、および現地の実態に合わせたパラメータの継続的な改善が重要課題である。