| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-170 (Poster presentation)
セグロウリミバエは主に東南アジアに分布し、幼虫がウリ科等の果実の内部を食害する侵入警戒有害動物である。本種は、2024年3月に沖縄県名護市のトラップで確認されて以降、沖縄本島及び周辺離島で分布を拡大している。これに対して、2025年6月から不妊虫放飼法(SIT:人工的に大量増殖・不妊化した害虫を定期的に放飼することで害虫の正常な交尾・繁殖を阻害する防除法)による根絶防除が開始された。SITでは、野生虫に対する不妊虫の個体数比(SN比)が大きいほど防除効果が増加し、一般にSN比が10を超えると根絶が可能になると言われている。したがって、防除を効果的に進めるためには、野生虫と不妊虫の個体数の空間分布を考慮して防除効果を評価し、放飼数の空間配分を順応的に管理する必要がある。本研究では、沖縄本島内の654基のトラップの月毎誘殺データを個体数量ベースの種分布モデルに適用し、本島内の野生虫・不妊虫の個体数及びSN比の空間分布を推定した。野生虫の推定には月別平均気温、平均降水量、平均標高、土地利用情報を説明変数として用いた。不妊虫の推定ではそれらに加えて、ヘリコプターよる区域毎の不妊虫放飼数を説明変数として用いた。推定には一般化線形モデル、一般化加法モデル、ランダムフォレストを用い、k分割交差検証法でモデル選択を行った。その結果、重点的に不妊虫を放飼した区域では、SN比が10を上回り、防除が順調に進んでいることが示唆された。一方、放飼区域外ではSN比は非常に低く推定された。これは放飼された不妊虫の分布は放飼された区域にほぼ限定され、区域外には分散しづらいことを示唆している。結果として、SN比は地域によって非常に大きくばらついていることが示された。今後は、本島全域で十分にSN比を大きくするため、不妊虫の増産を進めながら、不妊虫の放飼数の空間配分を適宜調整していく必要がある。