| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-171 (Poster presentation)
都市化は土地利用や景観構造を大きく変化させ、鳥類を含む生物の分布・個体群動態に強い影響を及ぼす。一部の鳥類は、行動適応を通じて都市景観を積極的に利用することが知られ、都市生態学における重要な研究対象となっている。佐賀平野のカササギは、17世紀頃に朝鮮半島から導入されたと考えられており、1970年代以降に電柱営巣へ急速に適応するなど、人為改変環境への行動変化が明瞭に記録されてきた。しかし、1990年代後半以降は個体数が一貫して減少しており、その原因として、土地利用の変化に伴う営巣密度の低下や繁殖成功の低下などが指摘されている。本研究では、佐賀平野における生息密度の現状を把握し、営巣場所選択に影響する環境要因を明らかにすることを目的とした。調査は佐賀市南部の36 km²を対象に、カササギおよびカラス類の営巣場所や周辺環境を記録した。また、低密度区と高密度区において巣立ち成功率の調査を実施した。その結果、カササギの営巣場所は強い集中傾向を示し、巣の周辺には建物が含まれる確率が有意に高く、樹木が含まれる確率も高い傾向があった。また、営巣は建物付近の農地と非農地の境界に集中した。育雛期間中の採餌場所は農地や家庭菜園が多かった。カササギとカラスの巣空間分布を解析したところ、互いに誘引も忌避も確認されなかった。カササギの巣立ち成功率は、低密度区よりも高密度区で有意に高かったのに対し、巣立ちに成功した巣あたりの雛数には両区間で有意差は見られなかった。一連の結果から、カササギの営巣場所として、農住混在景観や樹木の存在が重要であることが明らかになり、都市部と農村部の中間地帯の減少が佐賀平野における営巣数の減少に影響している可能性が考えられた。高密度の営巣が見られなくなった場所では、カラスによる捕食などによる巣立ち成功率の低下により、さらなる密度低下を招いていることが示唆された。