| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-173 (Poster presentation)
カラマツヤツバキクイムシ(甲虫目ゾウムシ科キクイムシ亜科)は、カラマツ属樹木を寄主とする樹皮下性キクイムシである。北海道(本島)にはカラマツ属樹木の自生はないが、本種は明治以降に造林されたカラマツ人工林において普通に生息し、ときに大発生して枯損被害を引き起こしている。北海道のカラマツヤツバキクイムシは、道外のカラマツ属自生地から持ち込まれた丸太に随伴して侵入したと考えられているが、その由来地や侵入経路については十分に解明されていない。そこで本研究では、北海道のカラマツヤツバキクイムシの遺伝解析を行い、本州およびグイマツ自生地である択捉島の標本、ならびにデータベースに登録されている中国東北部集団と比較することで、その由来の推定を試みた。ミトコンドリアDNAの COI 領域の塩基配列に基づく解析の結果、カラマツ属の自生地の地理的分布と対応する形で、カラマツヤツバキクイムシにおいても遺伝的な分化が認められた。一方で、北海道のサンプルは大きく二つのハプロタイプ群に分かれ、一方は本州で優占するハプロタイプ群(本州系)、もう一方は中国東北部で優占するハプロタイプ群(大陸系)であった。択捉島の個体は大陸系のハプロタイプであった。北海道では、いくつかの調査地点において本州系と大陸系が混在していたが、本州系のみが確認される地点も存在した。これらの結果から、北海道のカラマツヤツバキクイムシは、本州由来の移入に加え、それ以外の地域にも起源をもつ可能性が示唆された。また、道内における由来集団の混合割合には、地域的な差異が存在する可能性が考えられた。