| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-175  (Poster presentation)

ツキノワグマとイノシシにおける土壌採食量と筋肉中放射性セシウム濃度の関係
Relationships between soil intake and radio cesium concentration in muscle of Asian black bear and wild boar

*根本唯(東京農業大学), 斎藤梨絵(岩手大学), 神田幸亮(福島県環境創造セ)
*Yui NEMOTO(Tokyo Univ. of Agriculture), Rie SAITO(Iwate Univ.), Kousuke KANDA(Fukushima Pref. Centre EC)

2011年に発生した福島第一原子力発電所事故後、周辺地域の自然環境中では、土壌中に多くの放射性セシウム(以下、Cs-137)が存在している。これまで野生動物体内のCs-137濃度は、生息地のCs-137濃度、胃内容物中Cs-137濃度、および季節などによって変動することが知られているが、これらと同様に環境中においてCs-137濃度が特に高い土壌の採食量によっても変動することが予想される。そこで本研究では、福島県内で捕獲したツキノワグマ(Ursus thibetanus)とイノシシ(Sus scrofa)を対象に、土壌採食量と筋肉中Cs-137濃度の関係を調べた。土壌採食量は、強熱減量を用いて胃内容物の質量減少率(%)を計算することで推定した。質量減少率は、値が小さいほど多くの土壌が胃内容物中に含まれていたことを示す。質量減少率は両種間で有意に異なり、ツキノワグマの方がイノシシより多くの土壌を採食していた。ツキノワグマでは、胃内容物中の無機物量が多いほど、質量減少率は低い傾向にあった。ツキノワグマの筋肉中Cs-137濃度は、捕獲場所の土壌中Cs-137濃度と正の関係にあったが、質量減少率との関係性は認められなかった。一方、イノシシでは、胃内容物中の葉、植物茎部、植物地下部、および動物質の割合が多いほど質量減少率は低い傾向にあった。また、イノシシにおいて質量減少率は胃内容物中Cs-137濃度を通して筋肉中Cs-137濃度に影響していた。土壌採食量が増加するほど胃内容物中Cs-137濃度が高くなり、その結果、筋肉中Cs-137濃度も高くなる傾向が見られた。このことから、イノシシにおいては土壌採食量の増加が体内のCs-137濃度の上昇に影響していることが示唆された。一方で、両種間で傾向に違いが見られたことは、両種間の行動範囲の違いやサンプリング地域の違いが影響している可能性がある。


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