| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-177  (Poster presentation)

水田におけるミジンコの休眠卵
Dormant eggs of Daphnia in rice fields

吉田隼也, *永野真理子(京都先端科学大学)
Shunya YOSHIDA, *Mariko NAGANO(KUAS)

水田では毎年多くの鰓脚類が、土壌の休眠卵から孵化し、次世代の休眠卵をつくる。人為的かく乱が多い水田では、休眠卵が不適な環境に適応するための有利な戦略だと考えられる。水田に生息するミジンコ(Daphnia)も、わずかな湛水期間で、休眠卵からの発生と形成を行う。ミジンコの生活史や生態、表現型可塑性については、世界中で広く研究対象とされている。ところが、国内におけるミジンコの分類学的検討は乏しく、形態的分類と分子系統解析で得られる種数に相違がみられるなど、混乱を極めている(占部ほか 2022)。そこで本研究は、身近な水域である水田に生息するミジンコを中心に、その生活史や分類学的検討を行うことを目的とした。
調査は、京都府亀岡市にある水田(4面)を対象に2022年~25年の5年間実施した。ミジンコの採集方法は、ディスポカップ(200ml)を用いて、畔を100ml程度採水しながら1周し約3 L/面になるよう採水した。休眠卵の採集は、田んぼに水がなくなった10月以降の冬季に、田んぼ内の複数ヶ所において薬さじで少量ずつ採泥し観察に供した。ミジンコの形態と休眠卵は、生物顕微鏡(ZEISS)と実体顕微鏡(Nikon)で観察および計測をした。
水田におけるミジンコは、6月初旬から7月中旬の約1か月にわたって出現した。体サイズの変化から、水田の休眠卵から出現したと考えた。22年から24年までに得られた休眠卵の卵鞘の全長は、最大で2149.1 µm、最小で1488.6 µmであり、大型のミジンコであることが判明した。鞘のなかに入っている2つの卵は、サイズが異なることがわかった。卵鞘や卵の形状は、環境条件や母体の状態を反映していると考えられるが、これまで十分定量化されてこなかった。今後は、発育の健全性などを明らかにするため、孵化実験や飼育によって水田に生息するミジンコの生活史を解明したい。


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