| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-178  (Poster presentation)

ヒラスズキも川を上るか?耳石微量元素を用いた河川回遊履歴の推定
Does the blackfin seabass migrate upstream? River migration history inffered from otolith microchemistry

*國島大河(摂南大学), 森舜陛(摂南大学), 浅沼尚(京都大学), 鈴村明政(京都大学, 信州大学)
*Taiga KUNISHIMA(Setsunan University), Syunpei MORI(Setsunan University), Hisashi ASANUMA(Kyoto University), Akimasa SUZUMURA(Kyoto University, Shinshu University)

ヒラスズキLateolabrax latusは,波当たりの強い荒磯に生息する捕食性魚類であり,ルアー釣りの対象種として高い人気を誇る.近縁種のスズキL. japonicusは個体群内の一部が定期的に河川と内湾を行き来する部分回遊を行う一方,ヒラスズキは河川への回遊を行わないと考えられてきた.しかし近年,淡水域におけるヒラスズキの採集例が増えており,本種も生活史内で河川環境を日常的に利用する可能性がある.そこで本研究では,和歌山県日高川の汽水域(6個体)および淡水域(8個体)で釣獲されたヒラスズキ14個体を対象として,耳石におけるSr,Ba,Mg,Mn,Caの含有量分析から回遊履歴推定を試みた.
まず,耳石の核から縁辺までの微量元素量を計測し(線計測,n=5),SrとBaが外環境を反映すると判断できたため,これらのCa比を以降の解析に用いた.次に,縁辺5点での計測値(n=14)はおおむね汽水個体でSr/Ca比が,淡水個体でBa/Ca比が高かったことから,Sr/Ca比は汽水の,Ba/Ca比は淡水のシグナルとして利用できることが示唆された.そこで,淡水個体と汽水個体のSr/Ca比,Ba/Ca比,Sr/Ba比から,淡水/汽水を区分する閾値を暫定的に設定した.本閾値に基づき,線計測値を用いて大型の汽水個体(n=5)の回遊様式を推定した結果,①汽水または海水域のみで生活(n=2),②当歳時のみ淡水域へ侵入(n=2),➂定期的に汽水または海水域と淡水域を回遊(n=1)の3タイプに区分された.いずれも年輪周辺ではSr/Ca比やSr/Ba比が上昇しており,産卵期である冬期が年輪の形成時期であることを考えると,河川に遡上した個体はいずれも産卵期になると海水域もしくは汽水域へ移動することが示唆された.さらに,当歳時における淡水域への回遊様式は,成育場としての河川環境の利用を示唆しており,摂餌回遊の可能性がある.以上の結果から,ヒラスズキはスズキ同様に部分回遊性魚類であり,一部の個体は淡水域を含む河川環境を日常的に利用することが明らかとなった.


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