| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-179  (Poster presentation)

チドリ科の鳥“ケリ”における、繁殖後の群れ選択が翌年のペア形成に与える影響
The effect of post-breeding flock selection on pair formation in the following year in Grey-headed lapwing

*脇坂啓子, 脇坂英弥(関西ケリ研究会)
*Keiko WAKISAKA, Hideya WAKISAKA(Grey-headed lapwing Kansai RS)

一夫一妻性の鳥の多くは、繁殖後ペアの縄張りを解除し群れを形成する。最近、こうした非繁殖期の社会的な結びつきが、次の繁殖期へキャリーオーバー効果をもたらすことが分かってきた(Ramellini et al. 2025)。例えば、非繁殖期の早期に形成されたペアは、繁殖成績が高く離婚率が低い。一夫一妻で協力して繁殖するケリでは、長期にわたりペア継続する個体が存在し(脇坂ら 2015)、また近隣個体と共同防衛するなどの社会性を持つことが知られている。一方で、非繁殖期の動向はほとんど分かっていない。そこで我々は、ケリの非繁殖期の社会行動が翌年のペア形成に影響しているかに注目した。
2024年3月から2025年10月に京都府巨椋干拓地にて、ケリ成鳥47羽(11ペアを含む)を色足環標識により個体識別し、うち1ペアにGPSを装着して追跡した。
まず、非繁殖期のペアの結びつきが翌年のペア形成に影響するかを調べた。結果、非繁殖期に同じ群れに参入した4ペアは翌年もペアを維持したのに対し、異なる群れに参入した3ペアは翌年には離婚した(n=7, p<0.05)。よって、非繁殖期を同一の群れで過ごしたペアは離婚しにくいと考えられた。次に、参入する群れをどのように選択するのかをみた結果、標識した15羽が前年と同じ群れに、1羽が前年と別の群れに参入した(n=16, p<0.01)。従って、個体ごとに非繁殖期を過ごす群れが決まっている可能性があった。この現象はGPS追跡個体にもみられ、メスは前年と同じ2つの群れAとBで過ごした(脇坂ら 2025)。その後、メスは前年同様に群れAに帰還したが、オスは群れCに滞在していた。このことから、非繁殖期には雌雄ともペアより群れを優先しているのかもしれない。加えて、ペア継続の有無は繁殖成績に影響しないことが分かった(n=7, n.s.)。
我々は、ケリにおいてペア継続というキャリーオーバー効果を初めて示した。しかし、繁殖成績に関係しなかったことから、今後、環境変化などの他の要因を調査する必要がある。


日本生態学会