| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-180  (Poster presentation)

里山に生息する赤トンボ数種の季節的な食性変化の推定
Estimation of seasonal dietary shifts in several meadowhawk (Libellulidae: Sympetrum) species in Satoyama

*東川航(森林総研 九州支所)
*Wataru HIGASHIKAWA(FFPRI)

トンボ類は水域環境と陸域環境の両方を広く利用する移動性の高い捕食者である。
里山の赤トンボ類は、幼虫期には水田などの湿地に生息するが、成虫は種や季節によって異なる環境を利用する。例えば、アキアカネやナツアカネの成虫は、夏は山地の森林、秋は平地の草原で生活する一方、ノシメトンボは夏から秋にかけて森林への依存性が比較的強い。ミヤマアカネは、夏から秋にかけて草原で過ごすことが知られる。こうした生息地利用の違いは、種や季節によって特異な餌資源利用のパターンを生み出すと考えられ、それは炭素と窒素の安定同位体比に反映されると予想される。
本研究では、これら4種の成虫を夏と秋に採集し、安定同位体比分析に供試した。分析には、組織の入れ替わりが小さく主に幼虫期の食性を反映するとされる翅および主に成虫期の食性を反映する胸部筋肉を用いた。得られた値について、ベイズ推定のGLMMおよび事後多重比較により、同位体比の季節変化パターンを種間比較した。
翅のδ13Cおよびδ15Nはばらつきが大きく、種や季節の間で差がなかった。胸部筋肉のδ13Cについては、夏と秋の両季節においてミヤマアカネ>その他3種の関係性が見られ、なおかつ夏のミヤマアカネと秋のその他3種の間では差がなかった。胸部筋肉のδ15Nは翅の値よりも約1.5~2‰大きく、夏においてはノシメトンボ>その他3種、秋においてはミヤマアカネ>その他3種の関係性が見られた。
この結果から、草原性のミヤマアカネ以外の3種は夏の餌場としてC3生態系(森林)により強く依存し、秋には餌場を草原へとシフトする可能性が示唆され、森林と湿原との間で物質を輸送する生態的機能を有するものと考えられた。また、最も体サイズの大きいノシメトンボは夏の時点で他種よりも多くの餌を食べている可能性や、ミヤマアカネは秋に栄養段階の高い餌を他種よりも多く食べる可能性も示唆された。


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