| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-181  (Poster presentation)

サドナデシコナマコの生殖生態と発生
Reproductive ecology and development of an apodid sea cucumber Scoliodota japonica (Sado form)

*大森紹仁(新潟大学)
*Akihito OMORI(Niigata Univ.)

 棘皮動物は綱ごとに異なる幼生形態を示すとともに、綱内においても種ごとに生殖生態や発生様式が異なる。そのため、棘皮動物の発生の多様性とその進化について理解するためには、綱間のみならず種間での比較が必要である。無足目は棘皮動物門ナマコ綱の中でも祖先的な系統とされ、ナマコ類の進化を考える上で重要な動物群である。本研究では、内在性無足目ナマコの一群であるサドナデシコナマコの生殖生態と発生様式を明らかにしたので報告する。
 佐渡島沢根海岸の水深約0.5-1 mの砂底よりサドナデシコナマコ成体を毎月採集し、体長、体輻、総重量、生殖巣重量を測定するとともに、生殖巣の組織切片を作成して、生殖細胞の発達度合いを確認した。また、研究室内で自然放卵した胚について発生段階ごとに外部形態を観察するとともに、組織切片を作成して胚内部の構造を記録した。加えて、着底後幼生の体壁の一部を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理し、骨片形態の観察を行った。
 生殖巣重量比の月次変化および生殖細胞の組織構造より、サドナデシコナマコの生殖時期はおおよそ5-7月であることが示唆され、実際に7月に自然放精・放卵による正常胚が確認された。放精時の親個体は底質から完全に這い出し、頭部を持ち上げ口から放精する様子が見られた。サドナデシコナマコの初期発生は、原腸陥入の後に体の前方が細く伸長して涙滴型の浮遊幼生となり、その後前方の伸長部が縮んでドリオラリア幼生となる特異な発生形式を示した。幼生はふ化後約1.5日で開口するとともに底質に着底し、触手を用いて底質を摂餌する様子が見られた。本研究で観察された涙滴型幼生は他の棘皮動物では見つかっておらず、本種を含むごく一部の系統で特異的に獲得された幼生形態である可能性が高い。今後の更なる生態・発生学的研究により、本種を含む系統のみで涙滴型幼生を獲得するに至った進化的理由が明らかになることが期待される。


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