| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-182  (Poster presentation)

山形県鳥海山湖沼群におけるホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides)の貝採餌行動
Shellfish feeding behavior of Japanese raccoon dogs(Nyctereutes procyonoides) in marshes around Mount Chōkai in Yamagata Prefecture

*Nobuaki KOJO, Yumena Kojo NAKAMURA(Yamagata Dormouse Res. Group)

 近年、山形県鳥海山湖沼群ではイシガイ科二枚貝の捕食被害が報告されていた。このイシガイ科二枚貝(タガイ、ドブガイ、カラスガイなど)は世界各地に分布している淡水貝で、最大350㎜程度まで成長する。本科の稚貝は魚のエラに寄生して分散し、成貝はタナゴ類の産卵母貝になるなど魚類との関係性が深く、水質浄化などの観点からも生態系の維持において重要な種である。そこで本研究では鳥海山湖沼群におけるイシガイ科二枚貝の被食状況の把握を目的として、①被食個体数の変動や被食種、②自動撮影装置を用いた捕食動物の特定、③被食貝と非被食貝の形態的比較、④穿孔位置からみる捕食方法の傾向の4点について2023年10月から2025年の11月に調査を行った。
 ①被食されていた貝はイシガイ科二枚貝(n=339)の他にマルタニシ(n=2)が観察され、被食個体数は徐々に減少が見られた。②撮影結果から、タヌキ(Nyctereutes Temminck)が最も多く撮影され(n=132)、貝の採餌行動はタヌキでのみ確認された(n=48)。その中でも特定の1個体による採餌行動が繰り返し確認されており、その個体が撮影されなくなると採餌行動の撮影も減少していった。③被食個体の殻長平均値(95.67mm)は博物館及び野外採取の非被食個体(113.17mm・137.91mm)に比べて小さかった。また、野外での非被食個体のサンプリングでは岸から離れるほど個体サイズが大きくなる傾向が見られた。④被食貝のタヌキによる穿孔は殻の後端側に集中していた。
 これらの結果から貝の採餌行動はイシガイ科二枚貝を中心に行われており、特定の個体の学習に基づくものである可能性が考えられる。また、効率的に捕食するために選択的に貝の採集や殻をあける行動を行っている可能性が示唆された。エゾタヌキでは二枚貝の採餌が報告されているものの、ホンドタヌキでは確認されていない。今後、タヌキの捕食対象種として二枚貝を考慮する必要がある。


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