| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-183 (Poster presentation)
一部のコウモリにとってねぐらとなる洞穴は繁殖や越冬、休息などに利用される最も重要な資源の一つである。日本では複雑な地理的要因により、多様な自然洞穴が存在する。さらに、近年ではコウモリが人工的な地下空間(人工洞)、具体的には廃坑や廃隧道などを多く利用することが報告され、その増加がコウモリ個体群に影響を与えている可能性が指摘されている。しかし、先行研究の多くは人工洞と自然洞を区別しておらず、両者がどのように異なるのかについては未解明である。本研究では、1) 人工洞と自然洞の時空間的な分布の違いを明らかにし、2)それぞれの洞穴におけるコウモリの種組成の差異と3)洞穴の利用目的(越冬・出産哺育など)を解明することを目的とした。
文献調査および現地調査から、本州・四国・九州におけるコウモリの記録がある洞穴を人工洞5タイプ(暗渠、廃坑、隧道、石切場、戦争遺跡)に、自然洞4タイプ(石灰岩洞、火山洞、海蝕洞、窟:いわや)に分類し、それぞれにおけるコウモリの生息状況を整理した。加えて、人工洞は形成年代も特定した。次に、人工洞/自然洞、9タイプの洞穴間におけるコウモリの種組成の差異と各種の利用目的について解明を試みた。さらに、種組成がどのような構造的要因(壁面構造、洞口サイズなど)と環境要因(人為攪乱、水の有無など)に影響を受けているのかを調べた。
調査の結果、人工洞の数は自然洞と比べて倍以上であり、自然洞よりも広域に分布していた。また、多くの人工洞は16世紀以降に形成されたものであった。コウモリの種組成の差は人工洞と自然洞の間では小さかった一方で、9タイプ間では大きく、各種のコウモリの利用目的もタイプ間で異なっていた。種組成に影響する構造的要因としては洞口サイズおよび壁面構造、水の有無などが存在していた。本発表では、洞穴タイプごとの種組成と利用目的の差異を生み出す要因、および人工洞の生態的意義について議論する。