| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-184 (Poster presentation)
エビノコバン(Tachaea chinensis )は淡水エビを宿主として利用する寄生性等脚類である。エビノコバンは一回繁殖型であり、孵化直後から成熟するまでの長期に渡って宿主の体表面に付着し、宿主の血リンパを摂食しながら寄生生活を送る。このような生活史から、エビノコバンは長期間宿主スジエビに影響を与えることが考えられる。そこで本研究では、孵化直後から性成熟するまでのエビノコバンの成長解析を行うとともに、エビノコバンが長期に渡って宿主エビ類に与える影響を明らかにすることを目的とした。
飼育実験は2024年5月から2025年11月の間に行い、スジエビとエビノコバンを1個体ずつカップに隔離した感染群とスジエビのみを隔離した非感染群を用いて、2週間ごとに湿重量を測定し、SGR( 瞬間成長率 % )を算出した。また、宿主の残餌量を測定し、2週間ごとの摂食量を算出した。
エビノコバンの発生初期から性成熟するまでの成長は、ロジスティック曲線で示された。成熟日数と成熟時の湿重量には雌雄差が見られ、雌雄ごとに異なる成長曲線が得られた。エビノコバンは、体重が小さいオスが先に成熟して宿主から離れ、その後卵を抱えたメスが成熟して宿主から離れることが明らかとなった。一方で、エビノコバンの成長率には雌雄の差が見られず、雌雄の成熟日数の差が成熟時体重の違いをもたらしている可能性がある。
エビノコバンは宿主の死亡をもたらし、感染群の生存率は非感染群と有意な差が見られた。感染群スジエビは、2週間ごとのSGRが非感染群よりも低くなる傾向が見られ、死亡する直前のSGRは負になる傾向が見られた。エビノコバンの発生初期には宿主スジエビの摂食量を増加させるが、成熟直前には宿主スジエビの摂食量を減少させることが明らかとなった。これらから、エビノコバンは発生初期には宿主の摂食量に正の影響を与えるが、宿主のSGRには、長期間にわたって負の影響を与えることが明らかとなった。