| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-186  (Poster presentation)

ため池と河川との連結性が水生動物相に与える影響ー新潟県上越市を事例としてー
Effects of Connectivity between Farm Ponds and Rivers on Aquatic Faunal Composition: A Case Study in Joetsu City, Niigata Prefecture

*清水哉多(新潟市水族館, 水辺カオス), 大関佑弥(水辺カオス), 指村奈穂子(水辺カオス), 小林幸平(水辺カオス)
*Kanata SHIMIZU(Niigata City Aquarium, Aquatic Chaos), Yuya OSEKI(Aquatic Chaos), Naoko SASHIMURA(Aquatic Chaos), Kouhei KOBAYASHI(Aquatic Chaos)

 新潟県上越市は、日本有数の地すべり地として知られ、県内でも特に水生生物の多様性が高い地域である。地すべり地は狭い範囲内にため池や河川など多様な水辺環境を有するが、それら水域間の連結性が水生生物相に及ぼす影響は十分に検討されていない。本研究では、地すべり地形が卓越する同市を対象に、ため池と周辺河川の連結性が水生動物相に与える影響を明らかにすることを目的とした。
 調査は、上越市内の地すべり地を中心に、ため池34か所および最寄り河川18箇所を選定して実施した。生物調査は2025年8月から10月に行い、各地点においてタモ網による10分間採集を実施し、出現種と個体数を記録した。環境要因として水温、pH、EC、抽水植物の被度を測定した。群集の類似性の評価にはSorensen指数を用いた。また、地形的要因の解析にはQGISを用い、各ため池と対象河川間の標高差、直線距離および流下距離を算出した。
 その結果、ため池では118種、河川では計48種の生物が確認され、両水域の共通種はトウヨシノボリやスジエビなど13種であった。Sorensen指数と各ため池―河川間の直線距離、流下距離および標高差との関係を解析したところ、ため池と河川の標高差が大きい地点ほど指数が低く、共通種が少ない傾向がみられた。また、地すべり地にあるため池ほど河川との標高差が大きく直線距離が短く、動物相の類似性は低かった。これは、地すべり地特有の急斜面や複雑な起伏が大きな標高差を生み、生物にとっての障壁となっているためと考えられる。
 一方で、この地形的な障壁による連結性の欠如は、河川生息種のため池への侵入を防ぎ、それぞれのため池における環境条件をより反映した生物群集の成立を促進していると推察される。以上の結果から、地すべり地に特有の地形的不均一性とそれに伴う水域の孤立化が、狭い範囲に多様な水辺環境を創出し、結果として地域全体の生物多様性の向上に重要な役割を担っていることが示唆された。


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