| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-188 (Poster presentation)
ここ数十年で, 高密度化したニホンジカ(以下シカ)の 採食圧により本州各地で下層植生の衰退が顕著となっている。こうした植生改変は植生構造や土壌の変化を介し他の生物の減少または種構成の変化を引き起こし,生態系へ様々な影響を及ぼしていることが報告されている。とくに鳥類は節足動物から小―中型哺乳類まで多様な分類群の主要な捕食者であり,生態系の中で調整機能を担う重要な位置を占める。 シカの高密度化により,下層植生を利用するウグイスやコルリなどは採食場所や営巣場所が失われ,負の影響を受けていることが報告されている。しかし,これらの研究は特定地域における事例が中心であり,シカの増加が広域スケールでどのような影響が及んでいるかの評価はほとんどない。そこで本研究では,富士北麓の亜高山帯から山地帯までを含む南北約16km×東西約28kmの範囲を対象とした 2 km メッシュを設定し,その交点付近47か所にIoT自動撮影カメラとICレコーダーを設置した。これらから,森林36か所について2025年5月~6月にかけてのシカ画像と,同年6月のICレコーダーによる鳥類音声データを取得した。記録された鳥類の種数を応答変数とし,周辺の環境要因(下層植生の高さ平均,シカ管理捕獲の有無,標高)と シカのRAI(Relative Abundance Index:撮影頻度指標)を説明変数としたGLMによるモデル解析を行い,シカの影響を富士山麓の広域で評価した。結果,管理捕獲を実施している地点では鳥類の種数が多くこれらの間に正の関係があることが示された。本発表では,シカのRAIやシカ管理捕獲,下層植生と鳥類種構成との関係について議論する。