| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-190  (Poster presentation)

同所的に生育する2種の岩礁性海草間での生物群集比較
Comparison of benthic invertebrate communities in two co-occurring rocky seagrasses

*伊藤(阿部)美菜子, 田中法生(国立科学博物館)
*Minako Abe ITO, Norio TANAKA(NMNS)

海産種子植物である海草が形成する海草藻場は、水産重要種や絶滅危惧種を含む多様な動植物に生息・産卵場所や仔稚魚の生育場所を提供している。岩礁性海草は波当たりの激しい岩場環境に適応し、海藻にはない根を岩の隙間にしっかりと張る。強い波を葉が弱めることで根の周りに土壌を堆積させる作用があることから、岩礁性海草の周囲には多様な底生生物が生息することが予想される。日本には北方種で大型のスガモPhyllospadix iwatensisと南方種で小型のエビアマモP. japonicusの2種の岩礁性海草が分布しているが、それぞれの海草種の底生生物相や海草種が群集構造にどのような影響を与えるかはわかっていない。本研究では、同所的に生育する2種の岩礁性海草種間の底生生物相比較により、海草種が群集構造に与える影響を探ることを試みた。
2025年7,8月に、スガモとエビアマモが同所的に生育する本州太平洋沿岸の3地点(茨城県日立市小貝浜、千葉県銚子市君ヶ浜、同御宿町小波月海岸)において採集を行った。底生生物は、海草の葉の間に生息する表在性種と、海草の根茎の間隙や堆積物中に生息する埋在性種の両方を対象とし、各地点、各海草種で最大5サンプルを海草ごと採集した。海草は形態や株数、生物量(葉部、根茎部)の計測を行い、底生生物はエタノール固定後に分類群ごとに分けて同定、計数を行った。
調査の結果、底生生物の個体数と海草生物量の間にはゆるやかな相関があったが、その傾向に海草種間で差はみられなかった。また個体数と葉の形態の間には相関はなかった。また、予備的に行った綱や目レベルでの解析の結果、群集構造は海草種間よりも地点間での差が大きい傾向が見られ、また地点間比較、海草種間比較のどちらにおいても、表在性種よりも埋在性種の方で差が大きくなる傾向が示唆された。岩礁性海草藻場生物群集においては、根茎部の形態差による埋在性種の違いが地点間、海草種間の差異の要因となっている可能性がある。


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