| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-193 (Poster presentation)
池沼、湿地などの止水域は生物多様性が高いが、氾濫原や後背湿地の多くが消失した日本では、止水性の水生生物にとって、ため池は重要な生息地となっている。しかし、近代的護岸化、管理放棄、侵略的外来種の侵入により危機的状況である。2019年には、全国20万ほどのため池のうち7万弱が「防災重点ため池」に選定され、安全対策が求められる中で廃止の動きも加速化している。各地で堤をV字状に切り崩し水位を大幅に低下させる工事が進む一方で、50㎝~1mほどの水深を維持する工事も一部で実施されている。水深は光量、溶存酸素、植生などを制御する環境要因であり、水生生物群集に影響を及ぼすと考えられる。そのため、本研究では池の水深と経年変化が水生生物に及ぼす影響を評価した。
生物多様性の高い岩手県一関市において、最深部を30㎝、90㎝、150㎝の3段階とした4m四方の計18の実験池が、久保川自然再生研究所によって2021年4月に造成された。以後、2025年までの毎年3月~11月に、各池の水深の深い部分と浅い部分における水生生物を調査した。
その結果、多くの種は、深い池の深い部分よりも、浅い池および深い池の浅い部分の両方で確認された。深い部分では、シャジクモなどの少数の水生植物が生育し、フサカ幼虫と一部のミジンコ類のほとんどは、また、ミズカマキリ、ツチガエル成体は、浅い部分よりも多く確認され、ゲンゴロウの越冬も確認された。創出初期には、チビゲンゴロウ、アキアカネヤゴやコミズムシ類が出現し、遷移段階が進むとともに、キイトトンボヤゴ、アオイトトンボヤゴ、ショウジョウトンボヤゴやコマツモムシが出現し、種数は創出後3年で頭打ちとなった。
以上より、ため池の水深を維持することは、越冬期などに深い場所を利用する生物に必要である一方で、様々な遷移段階の池が多くの生物の生息に寄与した。今後、定期的な管理や新たな池の創出が生物多様性保全に有用であることが示唆された。