| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-198 (Poster presentation)
生態系における局所生物群集は,地域の種プールから分散,環境条件,生物的相互作用などの選別を経て形成される.特に環境要因が選別するフィルタリングは,従来の「種」単位ではなく,体サイズや移動能力といった生物が持つ特徴・特性の指標である「形質 (trait)」単位で作用することが提案されている.例えば,分散制限のプロセスにおいて,環境は種を選別しているのではなく,移動能力や幼生期間などの形質に作用する.このため形質単位での評価は,環境要因と生物が持つ特性との関係を明示的に示すことができ,種単位で群集を捉えるよりも,群集形成プロセスに関する推論を簡潔かつ明確に行うことができる.そこで本研究では,沿岸浅場に繁茂するアマモに蝟集する小型無脊椎動物の群集構造決定への環境フィルタリングの寄与を形質単位で評価した.
2024年の各季節に八代海のアマモ場4地点において,小型無脊椎動物を定量採集した.採集した各種について文献を基に形質を分類し,機能的多様性 (FDis)を算出した.採集の際,環境要因として,アマモの立体構造 (株数,草長,現存量),水質と底質を計測した.
小型無脊椎動物群集の機能的多様性は主要な環境勾配と有意な相関を示したことから,環境フィルタリングが形質単位で作用していることが示唆された.主要な環境勾配は,アマモの繁茂状態(生息場の立体構造)とChl a濃度だった.形質群集の空間的な変動には,環境要因としてChl a濃度に対し,移動・分散に関わる形質が強く関連していた.これは環境要因としての資源量が分散特性の異なる個体を選別していることを示唆している.一方,形質群集の季節的な変動では,環境要因としてアマモの立体構造に対し,生息場選択に関わる形質が強く関連していた.これは季節に伴うハビタット構造の変化が各個体のマイクロハビタット選択を選別していることを示唆している.このように,形質を用いることで群集形成プロセスの具体的な議論が可能となった.