| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-199 (Poster presentation)
生涯において海と川を行き来する通し回遊性の魚類およびエビカニ類(以下、まとめて回遊性生物)は、河川生態系の重要な構成要素である。高緯度地域では、繁殖と初期成長を河川に依存する溯河回遊性が優占し、回遊性生物は海から河川・陸域への“栄養の運び手”として大きな役割を果たすことが知られている。一方、中低緯度地域では、より長期にわたり河川で生活する両側回遊性や降下回遊性が優占する。これらは栄養の運び手であると同時に、河川群集における“消費者”であり、非回遊性生物との資源をめぐる“競争者”でもある。回遊性生物は生活史戦略の研究において好材料とされたことから、個別の種の生態の記載や非回遊性生物を含む近縁種との比較はこれまで数多く行われてきた。しかしながら、中低緯度地域において、回遊性生物が優占する河川食物網の詳細な記載はほとんど行われておらず、回遊性生物を特徴付ける生態特性が、河川食物網全体の構造をどのように決定するのかはわかっていない。例えば、(1) 回遊性生物の種構成は塩分濃度などの環境勾配や、海からの距離や堰などの移動制限要因に応じて変化する。(2) 回遊性生物は一般に、非回遊性の近縁種に比べて小さな卵サイズと急速な成長、大きな体サイズといった生活史特性のセットを持つ。(3) 回遊性生物の移入・移出や成長・繁殖イベントはおおよそ河川と海の生態系の生産構造の季節性に応じて毎年繰り返される。これらの特徴は河川食物網の構造にどのように影響するのだろうか? これらは、両側回遊性や降下回遊性を持つ生物の生態系機能の理解に加え、近年主流となりつつある生態系スケールでの保全の実践において有用な情報となる。そこで本研究では、揖斐川支流の小河川において、河口からの距離や海との分断傾向が異なる複数地点で季節を通した生物採集を行い、魚類と餌生物の食物網構造の記載を行った。本発表では、これまでに出ている結果を紹介する。