| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-202 (Poster presentation)
自然環境に生きる野生植物は資源をめぐる競争にさらされ、個体の資源獲得を最大化する多様な表現型を進化させている。一方、血縁選択など特殊な条件では協力的戦略が進化し得るが、植物ではほとんどない。そのため、植物の競争性⇔協力性を種内・種間変異として扱えず、進化プロセスの検証は困難だった。そこで私たちは作物の脱栽培化(=雑草化)に注目した。作物は集団の適応度を最大化するよう人為選抜され、種内競争を緩和する協力性を獲得したと考えられる。さらに野外に逸出し脱栽培化した「作物」では、強い自然選択により協力性が急速に失われ、競争性が進化した可能性がある。つまり作物と脱栽培化雑草は、植物の競争性⇔協力性の進化を検証する良いモデルである。昨年度は栽培イネ系統と雑草イネ系統を高密度で同系統同士で栽培し、競争下での適応度変化と関連形質を調べた。その結果、雑草イネは適応度が大きく減少し、資源の限られた競争下で共倒れすることが示唆された。さらに競争下で雑草イネの根の割合が増えたことから、根への投資を増やす可塑性が競争性⇔協力性に関与すると示唆された。
本研究では、系統間競争、つまり雑草イネと栽培イネを混播した際の反応を調べた。雑草イネが栽培イネより競争的ならば、混播で雑草イネは根の割合が増加し適応度が向上する一方、栽培イネは逆の反応が見られるはずである。雑草イネと栽培イネを単播と混播で育て、地上部と根のバイオマス重を生育ステージごとに破壊調査した。解析の結果、仮説が支持される結果が得られた。出穂期以降、雑草イネは単播・混播ともに栽培イネより地下部バイオマスと地下部比率が増え、混播でより増えたが、栽培イネは逆の反応を示した。地上部バイオマスは混播の雑草イネで増えた。これらの結果は、イネが脱栽培化の過程で協力性を喪失し競争性を獲得したこと、それには根の投資を増やす表現型可塑性が関わることを示唆している。