| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-204 (Poster presentation)
異型配偶子性の有性生殖の維持メカニズムは、進化生態学における重要な古典的テーマである。従来の説明では、変動環境や遺伝学的過程への適応が、オス生産による増殖コストを上回る有性生殖の有利性として議論されてきた。一方で、有性生殖と単為生殖が直接競争する状況でどのような相互作用が生じ、性の維持に影響するのかは十分に実証されてこなかった。農業害虫として知られるネギアザミウマは、有性系統と単為系統が存在し、有性オスは単為メスにも交尾行動を行う。このような系では、単為系統への繁殖干渉が存在して、それが性の維持に貢献している可能性が理論的に予測されている。これまでの我々の研究で、同居させるメス数とオス数の両方が単為メスの増殖率を低下させることが示された。よって、繁殖干渉の効果を評価するためには、単為メスの適応度低下を資源競争(密度依存)と繁殖干渉(オス比依存)に分解して同時に推定する必要がある。本研究ではまず、単為メス数とオス数を操作した競争実験を行い、5日間の産卵数を計測した。そのデータに両効果を明示した個体群動態モデルを当てはめ、WAICに基づき変数選択した結果、単為メス数依存項とオス比依存項を含むモデルが最も支持された。これは、ネギアザミウマにおいて単為メス間の資源競争に加えて単為メスへの繁殖干渉が存在していることを示している。有性生殖種のオスから単為生殖種のメスへの求愛・交尾行動は、ネギアザミウマに特異的な現象ではなく、他の系でも観察されている。単為生殖種への繁殖干渉がほかの系でも起こりうるのか、繁殖干渉は普遍的な性の維持メカニズムとして機能しうるのか議論したい。